欧州ジェットスキー事情見聞録 3:ギリシャ編 レポート福井 昇

欧州をめぐる、カワサキのジェットスキー市場視察の旅。福井氏と同僚N氏はドイツから、ドイツ国民の別荘とも言えるギリシャへと南下した。そこには、ドイツで見られなかった、ドイツ人のマリンレジャー・ライフが在るはずだ。あぁ、まぶしい太陽が恋しい。


ドイツ軍団、ギリシャへ南下する


 今回のギリシャ行きは、前号西ドイツ編で紹介した“ゲルマン民族大移動”を実践したものだった。ドイツ・カワサキが夏のJSセールスに先がけプレス向けデモンストレーションをギリシャで行うということで、我々日本人を含む20名のドイツ軍団は、大挙してドイツからアテネへ繰り出すことになった。
   
   4月中旬であるが、今までの北ヨーロッパからアテネに降り立つと、まず太陽のまぶしさに目のくらむ思いがする。次に目がクラむのは女性の美しさである。一般に南へ下がると髪や目の色が濃いくなり、日本人好みになるのだが、加えて開放的で明るい気質もラテン系の魅力だ。ホリの深いフェイスに9頭身はある抜群のスタイルの若い娘達。今までみてきた“モグラの目”をしたドイツ人とはえらい違いだ。これで今まで暗かった欧州視察の旅が明るくなりそうだ。
   
   アテネの町は、車とモペットの量がもの凄い。それらの運転は荒く、ラテン系のアバウトさがよく出ている。モペットは街中にあふれ、若いアベックなどが2人乗りで車と車の間をアクロバットの如くスリ抜けていく。
 アテネから30分程の、デモ走行を行うリゾート地に向かいつつアテネ市内を観光し、かのアクロポリスの丘で一休み。ギリシャ時代ものの映画によく登場する。あの神殿であるが、こんな街中にあるとは思わなかった。もっと山奥にサン然とそそり立っていると思ってたのに!一種ガックリきた私だった。

 

 




地中海を隔てたトリポリをアメリカが攻撃した時だったので、空港内のテロ防止策は厳重を極めていた。ピストルではなく、虎でも殺せるライフルを携帯している。








アクロポリスの丘にて、ふとギリシャ神話の世界に思いを駆せる著者、福井昇氏。現在は、今年開業させたチームワールドJS店が忙しく、そんなヒマはない。


ギリシャの太陽に我々・・・・・
モグラの目はクラんだ!


ドイツ・カワサキ社長をもトリコにしたJS試乗会


 地中海に面したホテル、“アステア”に着き、夜はいよいよ、ジェットスキー・プレスミーティングである。ホテルの会議室正面に、ドイツからわざわざ運んだJSのカットサンプルを置きドイツ・カワサキのセールスエンジニアが記者陣に説明していく。
   
   このミーティングで驚いたことは、ドイツ・カワサキの日本人社長S氏のスピーチであった。記者達に向けてドイツ語で5分間位の挨拶をしたが、その直後、ドイツ人記者達が右手のこぶしで机をドンドンドン!と叩き始めた。瞬間わたしはギョっとしたが、後で聞くとこれは、ドイツ式の敬意を表した拍手なのだそう。
   
    次の日からホテル前のビーチにて、いよいよプレス向デモ走行と試乗会が始まった。JS550 2台、JS300B 2台の計4台がドイツから運びこまれ、この日ドイツ・カワサキの招待でイギリスからやってきたMr.トニーウォーカー、私、N氏の3人でデモラン。試乗会の方は、水温17°Cの中、ウエットスーツなしでヘーキのドイツ人記者達はもう面白がって写真撮影そっちのけである。ここでいてもたってもいられなくなったドイツ・カワサキ社長も乗り始めた。生まれて初めてというが、なかなかどうしての神風ライディング、座ったまま全開一直線ですっとばす。BMW733でアウトバーンを210kmで飛ばす中年暴走族である。







我々の泊まったホテル近くの湾の中。「松島から木を抜いた」ような断崖の岬。この近くでデモ走行を行った

 

 









プレスミーティング後の会食。ギリシャ料理は日本人好みのする味でウマイが、ドイツ人の食事はやたらよくしゃべり、長すぎる。


ギリシャの旅(環境編)


 少し詳しくギリシャのことを話そう。

 地中海からの温暖な風とまぶしい太陽、エーゲ海を見おろす白い建物などは周知のイメージだろうが、実に町の海岸通りではボート屋がよく目につく。所々でJS440モデルが置いてある。ドイツ人達のリゾート地であるせいか4月はガラすきで、どこの海水浴場でもJSが乗れそうだ。ただ生活レベルからいってギリシャでは、金持ちの遊びかレンタルユースといったところだろう。地元の青年達はモーターボートで水上スキーを引っ張り、ウエットスーツなしで遊んでいた。金はなくとも遊びには一生懸命な国民である。

 ビーチリゾート以外では、ギリシャの海岸線は映画さながらの断崖絶壁が多い。入り組んだ地形で岬のような突端が多くあり、ちょうど日本の松島から木を抜いたような景観だ。ただその突端に、“紀元前の見張り台”が幾つもそびえ立っているのには驚かせる。

アクロポリスの神殿を小型にした建物が岬ごとに建っているわけだ。水はキレイで波もないが、こういう所でJSに乗る気はしない。神話そのままの雰囲気で、今にも何か出てきそうな気がする。

 






港町の市場には安くてウマイものだらけ。真ん中の魚屋の左隣りは、豚ならぬ羊の足専門店。足首から先がズラリと並んでいる


ギリシャの旅(生活編)


 ギリシャのタクシーはメチャクチャ安い。日本円に換算すると、メーターは2.5円ずつ上がる。その代わり、カチャカチャと連続して上がるので、金のレートを知らずに初めてタクシーに乗った私は、余りに早く動くメーターに、そっと自分のサイフを握りしめてしまった。

 安いといっても、中にはクモ助タクシーがいて、メーターを隠して法外な料金をフッかけてくる。南欧全体に言えることだが、日本人は特に狙われているので要注意だ。

 食べ物に関しては、港町に行くとカフェテラス風の店に、安くてウマイ魚・貝・エビ料理が所狭しと並んでいる。市場へ行けば、あらゆる物が安く買える。一番ビックリしたのは、肉屋の棚にブタの足が皮をむいたまま50本位並んでいるのを見たときだ。ちょうどデパートの婦人用品売場でストッキングのサンプルを脚だけのマネキンにはかせて、カウンターの上に並べている、あの様子に似ている。ただそれが本物のブタの足だから、ピンク色が生々しくグロテスクだ。連れのN氏はこの足の料理を食べて「ウマイ」と言っていたが、私は食べる気がしなかった。


 地中海での華麗なライディング・フォームを皆さんにお見せできなくて残念だったが、私には忘れ得ぬ青春(?)の1ページとなった。

 次はやはり美人の多い、情熱の国、スペインへ向かう。今度こそジェットに乗ってる姿をお見せします!(と著者は約束しております:編)


ゲルマン民族:”前号の西ドイツ編をお読みの方はお判りだろうが、太陽に恵まれないヨーロッパ北側のドイツ人達が、マルクの高さにモノ言わせ、国民的規模で南欧のリゾート地へバカンスに繰り出すことを言う

プレス:ドイツの記者発表をギリシャで、というのは、日本で言えば、サイパン、グアムあたりになろうか。要するにギリシャはドイツ人にとって、それだけポピュラーな地なのだ

20名:私、同行のN氏、ドイツ・カワサキ社長とドイツ人スタッフ数名、そして、ドイツのプレス(報道)関係者達、という一行である

モペット:これで事故がなければ不思議な程だが、現地人いわく、「人をハネても安いから問題ない」のだそう。なーるほど

Mr.トニーウォーカー:トニーウォーカー氏は、この連載第1回イギリス編で登場した、英国のJS第1人者である。ドイツでの再会となったわけだ。

金のレート:ギリシャの通貨は“ドラクマ”という。私はこの通貨名を秘かに気に入っている

法外な料金:クモ助タクシーほどでなくても、つり銭をチップとしてパクリされてしまうので大きいお金で払うのはやめた方が良い


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